パパの2月4日

2024年2月8日木曜日

入試

立ち向かう長男くん

引き続き私視点の4日目。

ショックを受けた長男くんが最後の受験に挑んだ日。

起床、出発

今日は30分早く4時半起床。
算数と理科で最後の確認をしたいらしい。

昨晩、30分程度で終わるくらいに問題をチョイスしておく。
算数は普通に終わったけど、理科が…。

ちょいちょい、長男くんや。
電圧、間違ってる。
ちょっとまだ寝ぼけてるのかな?

「え、間違ってないよ。平気」

いやさ、毎度毎度、間違ってなかったから、こんな声掛けしないでしょ?
フツーさ。

ちょっと、見直してみ?

「だから、間違ってないじゃん!」 

…今日は入試、今日は入試。

あのさ、もう一回見てみ?
これ、何回路?

「並列回路でしょ!だから電圧等分してるんじゃん!」

はぁ!?
どーしてお前は、並列回路で電圧がループしないんだよ!?

「…はいはい。うるさいなぁ。ちょっと間違えただけじゃんか」

いや、お前、間違っているって指摘された上で気づかないんじゃ、ちょっと間違えたってレベルじゃ…!

「…もういいよ」

と、問題に戻っていく。

30分しかないし、1回なら追及しなくてもいいか。

と、すぐに今度は電流で間違える。

どーしてお前は、直列回路で電流が変わるんだよ!?

「はいはい。うるさいなぁ。ちょっと間違えただけじゃんか」

いや、2回連続で間違えるって、ちょっとじゃないだろ!

どーした。
動画も見たりして、回路のイメージつかめたんじゃないのか?

絵は、2つの回路での電流や電圧の絵は書ける?

「書けるからもういいよ」

頼むから書いてみてよ。
どこが分からないんだよ。
パパ、中学で習ってから間違えたことないよ。

何度かお願いしていると、スラスラーと書く。

…書けはするのか。

じゃあ、もう分からないなら、それはそれでもういいから。
もし回路の問題が出ちゃったら、はじめにこの2種類の回路図書いて、電流と電圧を整理してから解いたらどうだ?
10秒くらいで書けるだろ?

「だから、出来ないわけじゃないってば」

いや、これ、出来てないって。
ちょっと回路が複雑になればオームの法則で解くから出来るかもしれないけど。
単純な問題の方で、どうしてこうも簡単な間違えを…。

…まぁ、いいや。
それなら、あとは自分で判断すればいい。
もしできないなら、できないなりに対応することを考えれば問題はないだろうさ。

…電気が出ないことを祈るのみだな。
それに、こう言っておけば、受験のときに本人は間違えないように工夫をするだろう。
そこまで意地を張る子じゃない。

「…うん、わかった。間違えるときがあるみたいだから、はじめに整理してから解いてみるよ」

…思ったよりも反省が早かったな。
入試前だからか、これもまた成長なのか。

…そろそろ時間だから、いこうか。
今日は寒いぞ。雨も降っているみたいだし

雨が降っているのもあって、長靴や服の着替えも用意して、出発。

出た直後、時間を確認して予定通りと思うと、長男くんが忘れものをした。
待ってろ、すぐ、戻るからとダッシュ。

戻ってからまた時間を確認すると、4分のロス。

…普段なら問題ないけど…。
乗り換え案内を調べると、最寄り駅で随分待つことになる。

待っても間に合うだろうけど、学校まででもギリギリ目だな…。

今日は休日だから、電車が少ないし、ちょっと急がないと!
と、雨は降っているけど、少し小走りで駅に向かう。

長男くんが息切れをしない程度の駆け足?早歩き?のスピードを調整しつつ、急ぐ。
しかし、コレ、私にはキツイ…!

…なんとか間に合った!
息切れと酸素不足での吐き気がひどい。

席にはなんとか座れたけど。
さすがにこんだけ朝から運動させて緊張もないだろうけど、最後ということでの意気込みが変な方向にいっちゃうかもしれない。
アドバイスしておこう。

いいか、今日みたいな日は、二段階に目標を決めておくといいぞ。
1つはもちろん合格だろうけど、それは運も絡むから。
もう1つ、『自分が頑張ればできること』にするといい。

そうすれば、困ったときは、その最低限の方だけを意識できるからね。

「…じゃあ、『問題文を全部読んで、全部埋めてくること』にするよ」

キミにはちょうどいいかもね。
もしテスト中に困ったら、まず深呼吸して、それだけ思い出すと良い。
最後だ、後悔のないようにな。

「…そうだね。どんな結果になっても、後悔だけはしないように、答案作ってくるよ」

あぁ、良い答えだ。

学校についてから用意されている待合室へ直行、濡れた部分をタオルで拭き、長靴から普通の靴へ履き替える。
ズボンも持ってきたけど、あまり濡れなかったらしいのでそのまま。

着替え後、慌てずに、必要な荷物が全て長男くん側にあることを確認。

「じゃあ、行ってくるね」

おぅ。
今日で最後だ。思いっきり、いってこい!

「うん!」

そうして息子は、最後の会場に向かっていった。

受験中

わずかに遅刻気味なところから、しっかり送り出しを終えられた。
もう、どこかへ行く気力も残っていない。

…これで、長男くんの中受での送り出しは、終わったのか。

入塾してからの3年、彼の受験は、この学校を受けて終わりだ。

頭の中に色々な思い出が浮かぶ。

これまでのこと、直前期、受験。
昨日の呆然とした状態から、それでも今日の対策を始めたこと。

まだまだ頼りないところはあるけれど、間違いなく、この1ヶ月、いや1週間弱で、強くなった。
どんな結果になったとしても、後悔のない受験が出来ているといい。

半分まどろんでいるような意識の中で、今受験している科目のことを思い浮かべながら、長男くんが楽しめているか、辛い思いをしていないかだけを考えて時間が過ぎていく。

そういえば、昨日の結果についても、長男くんは「自分で最初に見たい」と言っていた。

どうせ、先に見たってバレやしないだろう。
態度に出すまでもなく、とっとと自分で確認してもらうわけだし。

でも、もう明日は受験はない。
今日は、本当に、自分で、見てもらおう。
私も長男くんと一緒に見よう。

発表時間を過ぎて、結果が気になる。
気になるけど。

私は後で一緒に見ると言ったけど、妻は先に見ると言っていた。
もう確認したはずだ。

少し別件で連絡を取り合ったけれど、結果を匂わせるような内容はない。
…落ちたのかな。

もし受かっていたのなら、少しくらい分かるような雰囲気を出してくれればいいのに。
落ちていたのなら、そういうのはなくていいけど。

そして、いよいよ最後の科目が終わる。

合流と結果確認

雨も上がり、スムーズに合流が進む。

この数日ですっかり慣れた行動の中、長男くんが帰ってきた。
表情は?
…一昨日よりは、明るくないかな。

当たり前だろうな。
あれだけ感触が良くて、落ちたんだ。
どんな出来でも、明るい気分にはなれないだろう。

「やってきたよ」

そうか。
よく、やって、きたな。

あれだけのダメージを負いながら。
よく、4科目とも、受験してきたよ。

「今日の出来はー。…国語は上々、算数は普通、社会は会心、理科は普通、かな」

この学校で算数が普通ということは、あまり良くはないと考えた方がいいだろうな。
…しかし、最後の最後、理科が伸ばせなかったな。

でも、もういい。
とにかく、お疲れさま。

「じゃあ、昨日の結果を見ようか。もう出ているんだったよね?」

さっそくだけど、気になるよな。

あぁ、出ているね。
じゃあ、また準備をして、と。

はい。あと、このボタンだけ。

長男くんの動きが、止まる。

表情が少し固い。
当然だろうな。
昨日の不合格後を見た後で、同じようにアクセスするんだから。

私の心臓もバクバクだ。

長男くんが息を一つ吐く。

…頼む!

桜色のバナーが見える。

「やった!受かった!」

やったな!!
良かった…。
ホントに、3年間、最後の最後まで、頑張ったな…!

…あぁ、やったんだな、オレの息子は。
今日の結果は明日発表だけど、最後まで受験を諦めず、自分の結果を自分で受け止めて、頑張り抜いた。

感動で声が震える。
まぁ、いいさ。
涙が出るなら、それはそれで。

「うん!行きたかったところだから、すごいうれしい!!やった!…ところで、さっきから声震えてんね。寒い?」

…あぁ、そうかも、な。待合室にいたから、少し寒いだけさ。

さて、ママや日能研への連絡は、どうする?

「もう少し、人がいないところまで行ってから話そうと思う」

そうか。
じゃあ、帰ろうか。

道すがら、妻と日能研に、昨日の結果と今日の手応えを報告。
妻はとても喜んで褒めてくれていたようだ。
日能研も、最後まで頑張ったと褒めてくれていた。

しかし、この子は電話の使い方を知らないのか。
スピーカーのこの部分を耳に当てたまま、このマイクにしゃべるだけだよ。
話したり聞いたりするときに、いちいち持ち替えたりせんでええ。

慌てながら話す長男くんを見ると、12歳の少年だったんだなぁと思う。

スイッチ解禁

電車に並んで座る。
休日だし、人もまばら。

「今日の受験の結果は明日かー。あれ?ひょっとして、これで、受験終わり?」

…え、そうだけど?
あれ、何回も、『最後の』って言わんかった?

濃い日々だったし、気づかないこともあるかもしれないけど?

「帰ったら遊んでいいの?」

…まぁ、しばらく受験はないから、遊んでもいいと思うよ。
さっそく勉強したいのなら、帰り道で中学の参考書でも買っていくけど?

「あ、それは遠慮しておくんでいいです」

なぜか敬語だな。

「そっかー、ゲームももう出来るのかー」

…そうか、『遊ぶ』という発想がもうなくなっていたんだな。

こんな小さい子が。
そんなに必死に勉強したんだね。

…中受の締めの言葉、言うなら、今か?

改めて、本当によく頑張ったな。
パパは、お前と一緒に勉強できて、本当に幸せな3年間だったよ。ありがとう。

「あーうん、そだねー。なにやろうかなー。ねぇ、ドラクエとかいいと思う?」

え…?
まさか、オレの締めの一言、スイッチに負けた?

ていうか、軌跡シリーズやるって言ってなかった?

…あぁ。ドラクエなら、11とか、いいんじゃないか?
スイッチ版、やってなかったんじゃないっけ?

「あ、それいいねぇ!スイッチも久しぶりだなー!」

…随分、良い反応っすね…。

家に帰って、改めて長男くんが妻に報告している。

「受かったよー!そんで、今日の出来は、わりとふつー!」

その間に、リビングから別の部屋に移して稼働されていたスイッチの配線を戻す。
…自分で配線とかしていれば、電気回路も多少は理解が進んだのだろうか。
電流とかは気にしないし、あんま関係ないかな。

動作確認までして、次に、夕飯の出前を選んで、と。
一通り、やるべきことやったら、急に眠気が。

あぁ、もう明日は受験の付き添い、しなくていいのか。
明日の結果はちょっと気になるけど、もう、眠い…。

そのまま自分で設定した出前の時間までぐっすり。

起きると長男くんが「やべースイッチの操作方法、思い出せねー」とか言ってた。

…平和な日常だなぁ。

その後

ついに、長男くんの受験は終了。

ホントーに、長い、4日間だった。
精も根も尽き果てた…。
合否の出ていない間の初日こそ、気楽な付き添いだったけど、合否が出始めてからはヤバい。

特に、それが不合格なら。
2月の受験で不合格を想定した出願プランは考えていても、いざ我が子の不合格を見たときの衝撃は、想像を遥かに超えていた。

大人でもそうだった不合格を受け止めて、最終日に向けて頑張れたこと、長男くんのその点を一番褒めてあげたい気持ち。
誰でも出来ることじゃないと思う。

そしてついに、最後の受験の結果を確認した日を迎える。
受験に行くわけでもなく、家で一緒に結果を見た、「パパと長男くんの2月5日」。