すべて息子達のためだから

2023年3月29日水曜日

生活

超面白かった

「あんな子に負けるなんてバカじゃないの!?

そんな煽り文に目を引かれた、中受小説。

「すべてあなたのためだから」

(Amazon引用)  
中学受験があぶりだす、母のエゴと娘の闇

良子は夫と小学4年生の娘・菜摘と暮らす、ごく平凡な主婦。何事にも消極的な我が子の性格に少々不満はあるものの穏やかな日々を送っていた。

優秀な娘を持つセレブなママ友・麗香は娘が赤ちゃんの頃から仲良しで、憧れの存在でもある。彼女の勧めで菜摘は中学受験に挑戦することに。麗香の娘・涼香と同じ塾に通えることに喜び勉強に励むと、菜摘は意外な才能を開花させ、39しかなかった偏差値をみるみる上げていったのだ。

我が子の可能性に舞い上がった良子は麗香に菜摘の成績をさりげなく自慢する。すると麗香の態度は一変、良子を無視し、ママ友とのランチ会で良子を貶める発言をするほどまでに。

私と仲良くしていたのは、愚かな母娘を見て優越感に浸りたかっただけ……。これまでの憧れと信頼の深さゆえに、そう悟った良子の反動は大きかった。麗香を見返す。成績を伸ばし涼香に勝つことこそ、菜摘の将来のため。決意した良子は娘に勉強を強い、その教育熱は次第にエスカレートしていく。やがてそれは思いもよらぬ悲劇を招くのだった。

「どこかの家庭で今まさに起きているのでは」と思わせる、リアルな恐怖が読者の心に爪痕を残す衝撃作!
あはは。
読者の心に爪痕が残りまくったわー。

なんか最近テスト続きなブログだったし、思うさま感想を書いてみる。

ネタバレなしな感想

中受系の小説で、煽り文に惹かれて買ってみた。
こういうドロドロしているであろうもの、読みたい気分だったし。

結果、超面白かった!

煽り文の裏で説明されている人物相関図の通り、大して複雑な話ではない。

主人公ママ、その人が尊敬する憧れのママ友、それぞれの娘の4人がメイン。
あとは、夫やその他のママ友、塾長先生など、数名程度の登場人物。

主人公ママの日記、というかブログに書いているという体で進む話。
お母さん目線、語り口も女性、ということで、私とは正反対の属性だ。
主題も、中受というよりは、娘を含むママ友間の人間関係のようで、完全に傍観者気分。

主人公親子は、紹介文の通り、憧れのママ友から誘われ、新5年生のタイミングで中受へ。
娘同士の仲も良く、憧れのママ友さんの娘は4クラス中の最上位クラス。

入塾後初回の実力模試では偏差値39をたたき出した主人公ママの娘。
その後、憧れのママ友からのアドバイスやその娘から未修範囲を教えてもらうなどを経て、成績は急上昇。
憧れのママ友の娘にも迫っていく。

そうして、壊れていくママ友関係。
子どもまで嫌がらせをしてくるようになる。

なんと、憧れのママ友は、マウントを取っていたいだけだったのだ!

結果、ひどく傷ついた主人公ママは、娘を使って、憧れのママ友への復讐を決意する。
娘の成績を、憧れのママ友の娘以上に仕立て上げることで、見返してやろう、と

…もう、なんというか、目的も手段も「ソレじゃない」感がハンパない。

思いも寄らぬ悲劇って、なにさ?
冒頭のセリフはいつ放たれちゃうの?

オラ、ワクワクが止まんねぇぞ!!

ちなみに著者の武内昌美さんという方は、マンガ家もされているそう。
私は存じていなかったのだけれど、妻は知っていて作品も実家で持っていたとか。

という縁もあって読んでみたけれど、私は非常に楽しめた。
買って良かった。
すっごい面白かった。

ここまでがネタバレなしな感想。

長男くんの春期講習

ネタバレな感想に行く前の行数稼ぎに、春期講習中の長男くん。

朝も早くから勉強をはじめ、
・サピ漢の2冊目
・語彙
・メモチェの社会(歴史)
・計算と一行題
・特別問題
・語句文法
・前日の残り
(・平面図形の方の必勝手筋)
と講習前にやる。

その後は春期講習。
帰りは9時ちょっと前。

で、大抵弁当を食べ切れていないので、残りを食べて。
9時半くらいから11時まで、その日の復習と必勝手筋をやっている。

図形、ガンバ!
まずは例題だけでもいいよ。
ストレスのかからない程度に、サクッとね。

次の全モでは歴史は一昨年・去年は出ていないっぽいけど、忘れすぎないようにねー。

と、気楽な感じで言ってみたら、ホントにやるんだよね…。
何この子、修行僧?
偉すぎでしょ。

あー、見ているの辛い。
なんか、絶対、熱望校に受からせてあげたい。

きっと、そういう気分になるだろうなとは思っていたけれど。
成績も足りないし、多分、数字が届いたとしても、簡単なところを集めるやり方で取れた数字じゃ、実力もまだ足りないんだけど。

ネタバレな感想

話を戻して、ここからはネタバレな感想。
もし、このニッチなブログを暇つぶしに開いてしまった人への配慮としても、これくらい空ければもういいはず。

というところで、まず第一のネタバレ要素。

多分、この小説は、ネタバレると、あんま面白くなくなる。

なので、また少し空けて、と。

そういえば、二男くんの方の春期の語句で、「空ける」と「開ける」の違いが出て来ていたっけ。

なかなか小4には難しいだろうけど、空間を「空ける」のと、閉まっているものを「開ける」の違いで合っているよね?

さて、ここから先は本格的にネタバレ。

主人公ママの娘の菜摘ちゃんを除いて、登場人物がみんな性悪。
まさか、中受系の小説だと思って読み始めたのに、ここまでの悪意に触れられるなんて。

ジャンルは、ギャグまでに突き抜けたホラーかな?

個人的に、ホラーは突き抜けるとギャグになると思っていて、もう笑うしかない感じ。
私的には最高の賛辞のつもりだ。
昏すぎる感情に何度も爆笑した。

しかし、妻的には、ここまでの結末はともかくも、女の子・ママ友の交友関係はこのようなものらしい。

怖すぎんだろ、女子。
リアルホラーだよ。

ところで、中受については舞台設定くらいで、あまり関係ないように思った。
そこに期待して読むと肩透かしかな。

だって、最後はまさかの殺人エンドだし。

中受の結末が刑事事件ですよ。
受験までは到達できませんでした。

中でも、マウントを取っていた憧れママとその娘が特に邪悪で、読みごたえがあった。
そして、壊れていく主人公ママ。

娘の生活の全てを犠牲にして、成績だけをひたすら上げていこうと。
それで見返そうと。

不幸なのは、それに応えられてしまう娘だったからなのか。
あるいは、はじめから応えられない娘なら、平穏に終わっていたのか。

おそらくだけれど。

その憧れママの方は元々結構苛烈+意識高い系な方だったというのと、小学校受験で失敗してしまっていたという設定だったので、そのときに母娘ともに、主人公ママに先駆けて心が壊れてしまっていたのではないだろうか。

壊れた後の主人公ママも、娘の成績が上がっていくにつれ、娘以下の成績の子や中受をしない子に対して露骨にマウントを取りに行くし。
その姿は、憧れママともダブる。

子どもの成績のみを頼りに自分の優越感を得ようとする、現実に相対したら吐き気を催すほどの邪悪な精神に、読み物だからこそ私にはものすごく楽しめた。

そういう気持ちがあることは理解できても、全く共感はできないからかな。

いや、子どもの成績がいくら上がっても、すごいのは子どもだけなのでは…。
「ウチの子すごい=それを育てた私もすごい」となって、親同士の勝負だと考えられる精神って、なんかすごーい。

その成績に至るプロセスだとか、親としての悩み、中受なら子どもの代わりでの計画の立て方、子どもへの教え方には多少興味あるけど、他人の子の結果を見せられて「すごいでしょ!!」って言われても、感心を伝えるときのさしすせそのどれかを選んで終わりそうだ。

私はブログにテスト結果をフルオープンで書いているけれど、目的が「文字にして問題と対策をクリアにすること」とか「日々を綴って後で自分が楽しむこと」とかだからか、その辺は全然分からないや。

最近は幸運にも色々と上手く進んでいるのか二人の息子とも良い成績が続いているけれど、もし見知らぬ誰かに誇示したいと思っていたら、そもそも2年前、下から数えた方が早かった成績には触れなかったろうな。

親の方が指導者として圧倒的に優秀で、子どもを導ける自信があったならともかく、逆算も教えられなかった程度の私だし。

ちなみに、感心を伝えるときのさしすせそっていうのは、

すがです!
びれました!
ごいです!
ンスありますね!
の発想はありませんでした!

といったもののどれかを発声しておくと相手が勝手に満足してくれる魔法ワードのこと。

話が逸れたけれど、物語は、壊れた主人公家庭の描写で幕を閉じる。

元々は長くてかわいらしい、印象的なまつ毛をした娘だったらしいけど、ストレスで眉毛ともども全部抜いてしまっていたとか。
それが一目では分からないくらいに、前髪もボサボサに伸びていたとか。

いや、それもう、亡霊みたいな風貌なんじゃ…。
学校関係者くらいだったらともかく、父は気づかないものか?

今回の話で唯一マトモだと思っていた父は、妻が壊れ始めてからあまり出てこない。
普通に考えたらココに至る前に止められちゃうだろうから、ちょっと現実離れな設定。
まぁ、ホラーだしな、ジャンル。

そして、物語が終わるそのときまで、ただひたすら娘のことを案じていた母親。
タイトルも回収しておしまい。

いいなぁ、こういう、狂った愛情

憧れママへの復讐をとかがあっても、そこだけはブレない。
方向は違うとはいえベクトルの大きさは同じような気がして、この気持ちだけは共感できる。

途中の、「私達の幸せは憧れママ達に勝った後にしかない。それを阻む者は、たとえ娘本人でも許せない」あたりの表現が、すごく好き。
ちょっと何言っているか分からない、その狂気が。

妻はこの辺で叙述トリックを疑って読んでいったらしい。
結果、ただのホラーだったのだけれど。

得られた教訓として、まずは、他人と成績比較するの、いくない。
別にいーじゃん、長男くんと二男くんが「成長している」と思えるなら。

私も、「受験のためには学校行くより塾の勉強させた方がいいんじゃないの?」とは若干思っているので、ちょっとドキッとしたところはあったけど。
途中から、超展開になっていくので、安心して反面教師として読めた。

「あまりにもリアルな衝撃作」とあるから誤解するけど、「リアル」なのは「現実っぽい」というよりは、「心情描写が生々しい」という意味に捉えた方が良さそう。

でも、私はそういう方が好き。
現実っぽいのは、現実で自分自身が体験しているから、さほど興味がないんだよね。

ドロドロでグッチャグッチャなホラー作品で、ホントに楽しめた一作だった!

長男くんにも読ませてみようかな。